農林道をめぐる技術は、ICT施工やリモートセンシングの進展によって大きく変わりつつあります。JAWRICは、事業として技術・調査研究に取り組み、現場で実際に使える知見を生み出し、技術基準やマニュアルを通じて全国に広めてまいります。
事業としての技術・調査研究
当機構の研究は、大学や研究機関における基礎研究とは性格が異なります。事業の現場で生じた課題を出発点とし、実証を重ね、成果を基準やマニュアルという形で現場に返すところまでを一貫して担うのが特徴です。
研究テーマは、市町村や都道府県、施工者から寄せられた技術的な相談をもとに選定します。現場の困りごとを解決することが目的である以上、研究成果は論文や報告書に閉じず、実際の施工や点検の手順として使える形にすることが求められます。
また、事業の執行そのものが研究の場でもあります。整備や維持管理の現場から得られたデータを蓄積し、分析することで、新しい知見が生まれます。当機構は、事業部門と研究部門が同じデータを共有する体制を整えています。
ICT施工
ICT施工は、測量、設計、施工、検査の各段階で情報を一貫して扱う取り組みです。マシンガイダンスやマシンコントロールを活用することで、丁張り作業が減り、盛土の仕上がり精度が安定します。当機構は、狭小な作業道や急勾配区間での適用方法と、効果の測定方法を実証してきました。
実証の結果、施工時間の短縮と手戻りの削減が確認できた一方で、現場条件によっては適用が難しいことも分かりました。こうした適用条件を整理し、発注時の仕様に反映しています。
ドローン測量
ドローン測量は、人が立ち入りにくい崩壊地や急峻な斜面の形状を、短時間で安全に把握できる手法です。空中写真から作成した点群データを活用し、出来形の確認や変状の経時的な比較を行います。
当機構は、GNSSによる基準点の取り方、空撮時の飛行条件、点群データの精度検証の手順を標準化し、業務で使えるマニュアルとして整備しました。災害時の被害把握にも活用し、初動復旧の判断材料としています。
環境配慮型工法
農林道の整備では、森林生態系や景観への影響を抑えることが求められます。環境配慮型工法として、地域の在来種を用いた法面緑化、間伐材を活用した構造物、野生動物の移動経路に配慮した横断施設などを検討しています。
これらの工法は、環境への影響を抑えるだけでなく、経年変化の観察を通じて維持管理の負担を評価する必要があります。当機構は、施工後のモニタリングを実施し、長期的な視点で有効性を確認しています。
研究の進め方
研究は、テーマの選定から成果の普及に至るまで、おおむね次の流れで進めます。各段階で外部の専門家や実務者による評価を受け、事業への実装可能性を確認します。
- テーマの選定 — 現場からの相談、技術動向調査、委員会の意見をもとに、優先度の高い課題を選びます。
- 事前調査・文献整理 — 既存の研究や実例を整理し、未解明の部分を明確にします。
- 実証計画の策定 — 現地試験の条件、測定項目、評価方法を設計します。
- 現地実証 — 協力事業者の現場で試験施工を行い、データを取得します。
- 評価・検証 — 精度、経済性、作業性、環境影響の観点から成果を評価します。
- 基準・マニュアルへの反映 — 成果を技術基準や手順書にまとめ、公開します。
- 普及・研修 — 現場技術者向けの研修や説明会を通じて、成果を広めます。
2026年度の主な調査研究テーマ
| テーマ | 概要 | 実施期間 |
|---|---|---|
| ICT施工の適用拡大 | 急勾配・狭小幅員区間における施工精度と効率の検証 | 2026〜2028年度 |
| ドローン測量の精度標準化 | 崩壊地・急峻斜面での点群精度と活用手順の確立 | 2025〜2027年度 |
| 環境配慮型工法の評価 | 在来種緑化と間伐材構造物の長期的な有効性の確認 | 2024〜2029年度 |
| 点検データの活用 | 点検記録の蓄積方法と劣化予測への応用 | 2026〜2029年度 |
| 災害に強い路網の評価 | 代替路網の冗長性と復旧時間の関係分析 | 2026〜2028年度 |
※ 表は左右にスクロールできます。期間は標準的な目安です。
研究成果は、技術基準・マニュアルや技術・調査研究(ハブ)で順次公開しています。事業の全体像は事業紹介もご覧ください。
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